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信頼のおける人
預言者ムハンマドの子供時代、若者時代、そして壮年期はみな、預言者として活動する為の礎石であり、到達する為の階段のようなものであった。だからこそ、彼を知る者はみな、彼が神の言葉を伝え始めるや否や彼を信じ、従ったのである。
彼は人生において一度も嘘をつかなかった。そのような彼が、アッラーについて語り、自分が預言者であることを述べたのである。どんな小さなことについてさえ、偽りを述べなかった人が、これほど大きく重大な問題について嘘がつけるだろうか
。不可能なことである。当時の人々はこのように考えたのだ。全員ではなかったとはいえ、意地や羨望にとらわれなかった人は皆すぐに、信仰し始めた。彼が生きた時代は、ジャーヒリーヤ−無明時代であった。しかし彼自身はジャーヒリーヤに似つかわしくない生き方をしていた。彼は信頼できる人だった。皆彼をそのように評価していた。例えば、旅に出なければならないとき、妻をどこかに預けなければならないとしたら、全く心配することなくムハンマドに預けることができるだろう。戻ってくるまで、彼女をちらっとでも見ないであろうということが全く何の疑いもなく、信じられるからである。あるいは、財産を誰かに預けなければならないときも、安心して彼に預けられるだろう。
預言者としての初期の時代に、ムハンマドはクライシュ族の人々とともに、アブ・クダイシュの丘で集っていたとき、彼らに尋ねた。「この丘の向こうに、敵が我々を攻撃するべく待ち構えているといったら、皆さんは信じますか」皆、信じますと答えた。彼にとって最も手ごわい敵となる、彼のおじのアブー・ラハブでさえ、そう答えたのだった。
彼はまだ母の胎内にいるときに、父を失った。5〜6歳のとき、母をも失った。祖父のアブドゥルムッタリブに引き取られたが、8歳になったころには祖父も世を去った。彼は彼の全ての信託を神に置いて、そして完全に神に自分自身をゆだねなければならなかった。父親の死によって、神は彼から全ての人間からのサポートを取り除くとともに、神のほかには彼には全くパートナーがいないのだという認識を彼に与えた。彼は祖父やおじの保護をある程度は受けることができたが、彼の本当の保護者が神であることはわかっていた。全ての現象の背後に、そして全ての出来事やその結果に、彼は全世界の唯一の創造主を知ることができた。
彼は孤児として育った
ムハンマドは孤児として育った。孤児であるということがどういうものか知っていたからこそ、慈愛あふれる父親のように振舞った。貧しさを味わったからこそ、支配下の人々の状態を配慮し、それにより振舞った。預言者の道徳心のなかでも、孤児と貧者に手を差し伸べ、彼らに目をかけるという心は、彼自身が育った環境にはぐくまれたものである。
「かれは孤児のあなたを見つけられ、庇護なされたではないか。かれはさ迷っていたあなたを見つけて、導きを与え、また貧しいあなたを見つけて、裕福にされたではないか。だから孤児を虐(しいた)げてはならない。請う者を撥(は)ね付けてはならない。」(朝章93/5−6、8−10)
彼は父を失うだけではなく、早い年齢において母をも失った。マディーナにある父親の墓を訪れた帰りにアブワの村で、25歳か26歳でなくなった。彼はたったの6歳であった。彼は父親、母親なしで残される痛みを学んだ。彼は人々に全てを教え、又あらゆる面で手本となる為に、まずご自身が何もかも経験しなければならなかったのである。
祖父のもとで
預言者ムハンマドが両親を失ったとき、彼の祖父でマッカで尊敬されている年長者のアブドゥル・ムッタリブが彼を守った。そのため、神はこの祖父をあらゆる不幸から守った。彼は最愛の孫を抱きしめ、いつでも彼の家で名誉ある席につかせた。彼は孫が人々を救うべく成長するだろうと感じていた。預言者ムハンマドはそれほどまでに気高く礼儀正しかった。一族の祖先であるカーブ・イブヌ・ルアッユに(一部の人によって彼も預言者だったというふうに考えられているが)最後の預言者が自分の子孫から現れるであろうことを予測していた。彼は名指しで言及していた。
「突然、預言者ムハンマドは現れるであろう。彼は便りをもたらし、そして彼の便りは真実である。」
預言者ムハンマドの高潔なる祖父は、アブラハの偉大な軍隊でさえ涙を流させることはできない人物であったが、臨終のときひどく涙を流した。息子のアブー・ターリブがわけを尋ねると、こう答えが返ってきた。「私はもうムハンマドを抱きしめられないだろうから泣いているのだ。」彼は付け加えた。「何かがムハンマドの身の上に起こるかもしれないと恐れて泣いているのだ。お前にあの子を託す。」
叔父アブー・ターリブの庇護
アブー・ターリブは約束に従った。預言者ムハンマドを40年近く庇護(ひご)し、援助した。彼のこの善行は、そのままにはされなかった。アッラーは、彼に、アリーのような子を授けられた。預言者たちの子孫は皆彼ら自身からなるものだが、預言者ムハンマドの子孫はこのアリーから続いている。アリーは全ての聖人の中で最も偉大で、最後の日がくるまでその代表とされている。これは、預言者ムハンマドを助けたことに対してアブー・ターリブに与えられた報酬である。
 
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