預言者ムハンマドを語る

 

 訳者より挨拶

 
イスラームは、本来テロや紛争などで象徴されるべき存在ではありません。しかし、特に最近、テロや紛争と結びついた形でイスラームが報道されることが多いのが現状です。


私たちがイスラームの本来のあり方を知ろうとした時、こういった報道などから見えてくるものだけを追っている限り、そこから学べるものは非常に限られた内容になってしまうと思います。イスラームは、世界の人口の五分の一が信仰している教えです。それだけの人が、単にテロや紛争で象徴できるような教えを信仰していると考えるのは無理があるのです。


イスラームの本来の姿を知る上で、大きな手がかりとなるのがイスラームの預言者ムハンマドについて知ってみることだと思われます。彼らは生きるうえで、多くの点において、預言者ムハンマドを模範としています。彼らが模範としている人とはどのような人物だったのか。イスラームはどのような状況にもたらされたのか、この教えはどのように伝えられたのか、どのように広められていたのか、これらを知ることによって、本来の姿のイスラームというものが見えてくるのではないかと思います。


日本でもこれまで、イスラームを知る為の本がいくつか出されてきましたが、今回は、イスラームの国では預言者がどのように語られているか、という視点から、ある本を紹介してみることにしました。


毎週金曜日にモスクで、ある高名な男性が、イスラーム教徒たちに、預言者ムハンマドについて語っています。その言葉からは、イスラーム教徒の預言者に対する認識、感情、そしてイスラームの歴史の断片、イスラームのあり方などが読み取れます。これらは日本での報道などからでは見えてこないものです。でも、本当はイスラームを知る過程での最も基本的な段階でもあると私は思うのです。


この男性は、フェトゥフッラー・ギュレン氏という方で、彼は現在かなり重い病気であるということが知られています。この方は、生涯結婚されませんでした。多くの書物、カセットなどが出されましたが、そこから得たお金で貧しい生徒達に就学の機会を与えられ、イスラーム社会の改善、異なる宗教間の対話の促進などに努められてきた人です。この方のそういった活動は欧米各国で高く評価されています。宗教的知識に留まらず、歴史、経済、法律、さらには科学といった分野においても深い教養を持っておられる方だということが、その書物からも伝わってきます。


こういった理由で、この本を皆さんに紹介したいと思い、このたび無事翻訳を終えることができました。皆さんがイスラームについて興味を持った時に、少なくとも情報を得る、という点で、ささやかでもお手伝いができれば幸いです。


注  ムスリムは預言者ムハンマドの名前を聞くと尊重の意味で〔サッララーフ アライヒ ワ サッラム〕「彼の上に平和と平安があれ」と唱えますが、この翻訳文ではそれを短縮形で示しています。

 

 

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